こんにちは。
【カラータイプⓇ×教養】シリーズ担当の武田 みはるです。
このシリーズも21回目となりました。いつもお読みいただき、ありがとうございます。
先月の即位礼正殿の儀をご覧になった方も多いと思います。
日本の伝統色の中で現代でもなお、一般人が着ることが許されない【絶対禁色】の「黄櫨染」(こうろぜん)をお召しになった天皇陛下と、
十二単姿の皇后陛下の艶やかなたたずまいは、
全世界に日本の伝統色のすばらしさをアピールできたのではないかと思います。
引用元:FNN.jp
黄櫨染については以前にお話ししましたので、(クリックすると以前の記事がご覧になれます)
今回は皇后陛下や女性皇族がお召しになった十二単について語りたいと思います。
即位の礼や一昨日の伊勢神宮で皇后陛下がお召しになったのは、
紅梅色の濃淡の袿(うちぎ)に紫の表着、萌黄色の唐衣(からぎぬ)。
これは【襲の色目】でいう「撫子の襲」(なでしこのかさね)ではないかと見受けました。
襲の色目とは、平安装束の「袷」の表地と裏地の組み合わせのことです。
要するに配色パターンですね。
現代では200パターンほどが確認されているそうです。
日本特有の四季折々の植物や自然の風物にちなんだ名前がついていて、
上記の撫子は夏に咲く花ですが、今の夏(6月~9月)は平安時代の秋。
よって秋に身に着ける襲の色目というわけです。
このように「襲の色目」は着る季節やシチュエーション、性別、年齢など事細かに決まりがありました。
それでも着用するタイミングや色の濃淡は個人のセンスにゆだねられていたのです。
季節の変化を敏感にキャッチし、それを色で表現するセンスを平安貴族は日々競っていたんですね。
特に高貴な女性は決して顔を見せませんから、
御簾から覗く衣装の襲のセンスで
「こんなお洒落な重ね着のひとは、きっと教養もあり美しい顔立ちにちがいない!」
と世の男性に思わせるのが腕の見せ所だったのでしょう。
かの清少納言は、『枕草子』に「すさまじきもの」として3月、4月(夏)に紅梅色を着ている女や
8月(秋)に季節外れの白い下重ねを着ている人を書き綴っています。
すさまじきもの=興ざめなもの
今でいう「的外れなダッサいオンナ!」と一蹴しているところが笑えます。
襲の色目は衣装にとどまらず、懐紙にも及びました。
当時は和歌を詠むのが恋愛の鉄則。
どんなに素晴らしい和歌でも、それをしたためる紙がそっけない和紙だと無粋そのもの。
薄く漉いた包み紙と歌を書き記す紙の配色の妙が、恋の駆け引きを大いに左右したと言われています。
源氏物語に「末摘花」という赤い鼻の姫君が登場します。
超ド級の世間知らずで一途な姫君が光源氏に手紙を送るのですが、ゴワゴワの分厚い紙で光源氏がびっくりするシーンがあります。
手紙の配色で自身の持つ季節感とセンスを表現する平安貴族は、日本史上最も色彩感覚の豊かな人たちだったのではないかと思います。
襲の色目を生活に取り入れると、雅な世界を少し感じることができるかもしれません。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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kotonoha代表
武田 みはる